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私は老いた男と電車の中で向かい合わせに座り、畏怖と困惑を混ざったような気持ちで互いに見つめている。相手の容貌を見ようとするが、薄くなった頭部の白髪と、分厚くて茶色いフレームの眼鏡以外、印象に残らない。わかりやすい外見の他に、何か特徴を見つけるのは難しそうだ。

地中深くに通っているトンネルを高速で越す。窓の向こう側に過ぎ去っていく無数の電灯ゆっくり呼吸するように色が変わっているように見える。陰は薄暗い電車の中にあっちこっち飛んでいる。長い間、音を立てるのは、車輪のカタンコトンという音だけ。とうとう、彼が口を開く。

「元気だったか」。唇はかすかな微笑みに曲がる。

私は反応しない。彼に言いたいことがないのだから。

「君の気持ちがわかるよ。今は一番会いたくない相手だろうから。特に一対一で。正直、僕は君にどう接すれば良いかずっと悩んでいた」

「何がほしいの?」と私はさえぎる。

「何も」と彼は言う。「実は、君に同じことを聞こうと思ったところだった」

「冗談やめて。じゃあ、どうして私がここにいるの? 元気だったかと聞くまでもないでしょう? 知らないわけない、私をここに引き込んだのだから」

「本当に知らないんだ」。微笑みが彼の唇から消える。「僕が君を来させる理由はない。君が自分で来る理由がないと、同じように」

その平然とした態度に苛立つ。その質問に質問で返すやり方にも。立ち去りたい。でも他に行ける場所がない。あるのはトンネルの底、地の底、暗闇の底。私にできるのは、ただ無力に男を睨むだけ。

彼は視線を地面に落とす。「きっと答えが出るよ」

トンネルの向こうから警笛の音がする。別の電車が反対方向に走り過ぎていく。一瞬、男の顔がヘッドライトに照らし出される。肌の無数の小さい皺は古い陶器の細長いヒビに似ている。

「実はね」と彼が静かに語り始める。「生まれる前、君がいつまでたっても理解できないじゃないかと、ずっと悩んでいたんだ。自分の血肉なのに、僕には得体の知れないものだって。だから、君が育ってから、お母さんによくからかわれた。あの子がエイリアンになるのを恐れていたけど、結局あなたとそっくりになったと」

「とっくに知ってるわ、その話。本人から聞いた。もうあの人のふりをやめてくれる? お互いわかってるでしょう、あなたがあの人じゃないってこと」

「たったの数年じゃないか」と男は応える。

「数年はあなたが消えるのに充分なはずだった。消えなくても、ともかく何か別の姿に。あなたがそのままの姿で、まだいるなんて思いもしなかったわ」

「でも、僕以外に頼れる人は誰かいるのか」

私は目を逸らし、窓越しに途切れなく続くトンネル灯の行列を眺める。静かに言う。「それこそが問題でしょう?」

老いた男は、返す言葉がない。